まずはじめに思いつくのはBomp!だ。Greg Shawのセンスによって括られた音楽の一部がLA Powerpopといえる。Greg Shawは全米、ヨーロッパのバンド等も発掘しているので、その中でもカリフォルニア産、またはLAを拠点に活動していたであろうバンドだけに絞ってみると、Flamin' Groovies, Nerves, 20/20, Stiv Bators, Zeros, Lastあたりがパッとでてくる。 そしてご存知Nervesの天才3人がPaul Collins Beat, Plimsouls, Jack Leeと分かれてからも各々が数々の名曲、名盤を残しているのはこのファンジンを手にしている人には説明不要だろう。彼らこそがLA Powerpopそのものだ。ジンといえばBompマガジン#18パワーポップ特集は全音楽ファン必見だ。日本語訳したもので、再発行する動きもあるようなので是非実現させてほしい。
Bomp!とも密接に関わっており、LA Powerpopシーンに欠かせない重要な人物が他にもいる。Pop, Zippersを排出した"Back Door Man"のPhast Phreddie Pattersonの功績は大きい。こちらも同名のレーベル&マガジン体制でLA Powerpopの源流の一角を担っている。我らが関口弘さんが彼の友人なので、興味のある人は話を聞いてみると、何でそんなことまで知っているのですか?という話があれこれ返ってくるだろう。
LAのラジオ局KROQのDJ、Rodney Bingenheimerも当然外せない。彼の監修でPosh Boyよりリリースされた"Rodney on the Roq"全3部作も、初回プレスには"Flip Side"の増刊号が付属され、レーベル&マガジン&ラジオという理想的な形でローカルバンドを紹介している。内容はパンク中心のラインナップだが、Little Girls / Earthquake Song (別ヴァージョン), Action Now / Try (アルバム未収録。PandorasのPaula Pierce在籍), Signals / Gotta Let Go(12"末収録)といった貴重な音源がひっそりと納められている。
Runaways, Quick, Hollywood Stars, Candy, そしてTommy Rock等、数多のプロデューサーであるKim Fowleyも中心人物だ。彼について特記すべきはLA Powerpopから話がそれるが、Innocents(Beathoven)も彼の手腕であることは見逃せない。
LA Powerpopのもうひとつの魅力は、Go-Go'sや上記に挙げたバンドを代表とするギャルバンド、フィメイルヴォーカルの宝庫であること。Nikki and the Corvettes, MnMs, Josie Cotton, Holly and the Italiansあたりはいつ聴いても素晴らしい。ペイズリーアンダーグラウンド界隈のバンド中でもBangles, Pandras, Redd Kross, Three O'ClockなどはLA Powerpopに欠かせない。
そして近年、カルトなポップンロールファン注目のBobbette RecordsのMark Lee Goodaleの名も挙げておきたい。上記主要人物に比べ、更にアンダーグラウンドな位置付けだが、3 Leez, Teeze, The's, James Vonsなどの破壊力はLA Powerpopの根底を覆すほどの衝撃であった。Bobbette Recordsについては別途特集を組む予定である。
以上、これまででてきたバンドや人物はパワーポップやパンクが好きな人であれば、知っているものも多く含まれるだろう。ただ個人的にはどうしてもシングル一枚で終わったようなアンノウンなバンドに惹かれてしまうので、今回は少々突っ込んだセレクトにした。断片的ではあるが、広大なカリフォルニアの地で活動し、LAでの成功を夢みて"Whisky A Go Go"あたりで最高のパフォーマンスをみせていたであろうドリームロッカーの当時の熱気を少しでも感じてもらえれば幸いである。
PoP"n"RoLL RaYDiO #0306 [ LA POWERPOP DREAM ROCKERS!!!!!! ] 1975-85 A2Z01 ACCELERATORS / It's Cool To Rock[1979 Wide Open 7"ep]
Shock, Plimsoulsを手がけたDanny Hollowayプロデュースにてリリースされた5曲収録のEPより、まさにLAパワーポップクラシックと呼ぶに相応しい"It's Cool To Rock"でプレイオン!この曲は現Radio HeartbeatのWilliamが編集したVA/Back Seat Love #2に収録され、また1995年にVikingsがカバーし、更に2010年Caroline & The Treatsにて再カバーを披露。Acceleratorsはワイオミングのララミー出身で、当初"Dirty Dogs"を名乗り、シングルを一枚プライベートリリースしているが、これがhard 2 find。200枚プレスの模様。Acceleratorsに変名後、LAに拠点を移して活動するもシングル一枚を残して短命に終わる。Accelerators解散後、ギターのEric AmbelはRik L Rikに参加し、"The Outback"という曲がRodney on the Roqに収録。それがきっかけでJoan Jettのオーディションで150人以上の応募者の中からBlackhearts初代ギタリストに選出され、イギリス、オランダでのツアーに参加。NYに戻ってアルバム(I Love Rock 'n' Roll)レコーディング中に脱退。その後はDictatorsのScott "Top Ten" KempnerとDel-Lordsを結成し、その他にも数多くのバンドで活動している。Ericが答えているAcceleratorsの興味深いインタビューがwebにあり、学生時代RamonesとDictatorsを観て、その後バンドをはじめたという記述がある。どうりで格好良いわけだ。やはり最初が肝心。
02 BANGS / Getting Out Of Hand[1981 Downkiddie 7"]
Bangs以前はCoulors、Supersonic Bangsというバンド名だったというBanglesがBangs名義で自主制作(ファンクラブ制作説もある)したファーストシングル。このシングルはラベルが3色存在するらしく(所有しているのはブルーラベル)、ジャケットを差し替えBangles名義になっているリリースもある。当時"No Mag"という音楽マガジン用に録った、この曲のコマーシャルバージョンがあり、"no mag bangles"でyoutube検索すると聴ける。また"beyond the valley of the bangles"でググるとRedd Kross, Black Flagと共演した1983年のライブがDLできるが、これがヤバい。Salvation Army/Three O'ClockのMichael QuercioがゲストヴォーカルのGetting Out Of Handと、Redd KrossのJeffrey & Steve McDonald兄弟(Jeffreyは当時BanglesのVickiと付き合っていた)が適当に歌うCall On Me(このシングルの裏面)が聴ける。
03 BLITZ / You Don't Have To Tell Me[1979 Richmond 7"]
カリフォルニアはバークレー産のPsycotic PineapplesのレーベルRichmondより第2弾リリース。タイトル曲はBサイドで、ヴォーカルとキーボードがPointed Sticksを彷彿する超名曲!以前からお気に入りだったが、最近それ以上に思い入れがある特別なシングルとなった。理由は以下参照。RubinoosのTommyに教えてもらってひっくり返った。Rubinoosの初代ドラム(正式にはDonn Spindtは2代目)Ralph Granichが在籍。スペシャルサンクスのGary PhillipsはRubinoos1st&2ndアルバムのプロデューサーで、レコーディングはDan Alexanderのスタジオ。エンジニアがRichard Van Dornと、全てにおいてRubinoosフレンズクルーで仕上げられた一枚。悪いわけがない。Aサイド"Panic Button"も格別!Teen Line compに収録されているが、なぜかキーボードではじまる最高なイントロがカットされている。BLITSのメンバーのTodd StadtmanとDavid Rubinsteinは後にZikzakというポップデュオで活動。
04 BREAKERS / Radio Love
[1981 Riot 7"]
数年前に突如発掘され、US Poewerpopコレクター間でウン万円で取引されていたのは今は昔。メンバーからデッドストックが出た為、比較的安価で手に入るようになった。内容はいつまでも色褪せることはないレディオポップンロールの決定盤!ポップンロールにこの手のひきまくりギターは不可欠(ロバジョンしかり)。b/w"My Momma Told Me"も極上グラミーパワーポップでたまらない。今回使用した写真のジャケットデザインはオリジナル酷似のブートレッグ。メンバー本人に確認したところ存在を知らなかったので恐らくブートだが、それにしても作りがよく出来ている為、作製者を何とか突き止めたい。1979-83の活動期間中、シングル一枚のみのリリースだったが、近年メンバー作製のCD2枚組"Past And Way Past"でごっそり音源が聴ける。シングル級のが数曲収録されているので要チェックだ。以前あったバンドサイトにて貴重な写真やフライヤーが拝めたがメンバーが付けてた”I Love LA"デカバッヂは是非真似したい。
05 CHERI GAGE / Let's Dance[1983 Invasion 7"]
熱心なパワーポップファンはご存知、Signalsでお馴染みのBomp!傘下のInvasion Recordsより。今回収録したのはChris Montezのヒット曲"Let's Dance"のご機嫌なポップンロールカヴァー!Aサイド"Don't Look For Me"はオリジナル曲で、こちらもBlondieライクでドリーミーな名曲。ともにプロデュースはDan Phillips and David Scott(aka Kessel兄弟)。まずCheri Gageとは何者か?どうやら1969年にJobriathがやっていたサイケバンドPidgeonのヴォーカルだったようだ。そして80年代初頭にソロ名義でKessel兄弟のMartian Recordsから恐らく"Hear It Comes b/w 96 Tears","Don't Look For Me b/w 96 Tears", "Experience b/w Let's Dance"の3枚の12"がリリースされている模様。LPがあるという記録もあるがネット上に情報がなくリリースされていない可能性が高い。ここで予想されるのはGreg Shawが上記より2曲抜粋してInvasionからシングルカットしたのではないかという仮説。しかもシングルのラベルにはプロモオンリーの記載あり。正式にリリースされたものではないのかもしれない。Kessel兄弟はPhil SpectorやPete TownshendのヒーローであったジャズギタリストBarneyKesselの子供で、Phil Spectorのアシスタントエンジニアとなり、様々なアーティストのスタジオミュージシャンをこなす。John Lennonのカヴァーアルバム"Rock N Roll"でギターを弾いているのも彼らだそうだ。また重要なのは、Kessel兄弟が"Stars In The Sky(and the Milky Way Band)"名義でシングルを一枚のみ残していること。Aサイド"Baby Hold On"はMartians名義でBomp!のVA/Waves#2等に収録されているので、聴いた事がある人も多いだろう。b/w"Love (What A Felling)"がもろPhil Spectorサウンドでお気に入りだが、最近ちょうどRubinoos来札特典CDに収録したので今回は選外。そしてLA Powerpop重要人物の一人であるKROQのDJ"Rodney Bingenheimer"のソロ作もKessel兄弟。更にBomp!、Blake Xolton, Blondie、Nikki and the Corvettes、Paley Brothers、Ramones、Tommy Rockあたりも絡んでくるので放っておけない。Kessel兄弟関連は要チェックだ。
06 CONDITIONZ / She's So Suburban[1983 Primal Lunch 7"]
LAにほど近いイングルウッドのメキシカンレストランで録音されたという、ウソのような話もあるCONDITIONZのオウンレーベルPrimal Lunchの記念すべき001番。元々ジャケなしの模様。聴いてのとおりPunkとPowerpopが理想的にミックスされた、Pop Punkファンにもアピールできる会心の一撃!b/w"House Devided"も哀愁疾走パワーポップで個人的には高ポイントを献上したい。カリフォルニアのリバーサイド出身(サンディエゴ出身説もある)で、シングルは1枚のみのリリース。その他アルバム3枚、12"EP1枚、CD1枚をリリースしており、Agent Orange, Channel 3Three O'Clock, Pandoras等と共演の記録がある。バンドのウェブサイトで"She's So Suburban"含むライブトラックが14曲も聴けるが、この1stシングルのような興奮は味わえないので残念。
07 CONTRABAND / In The Night[1979 Louder Faster Music 7"]
あのFun Thingsを彷彿するジャケットデザインより飛び出す、Scientists - Shakeライクな必殺パワーポップというと少々言い過ぎかもしれないが、レーベル名 Louder Faster Music に恥じないこの勢いある楽曲は一級品だ。b/w"Serching For Affection"もミドルテンポの素朴なパワーポップで悪くないが、どうしてもIn The Nightばかり聴いてしまうのは否めない。1978年にDan Christy and the Contraband名義で"Don't Stop b/w No Place I'd Rather Be"を同レーベルからリリースしているので、In The Nightは厳密には2ndシングルにあたる。1stの内容はぎりぎりパワーポップといった感じ。今回このレビューでひっぱり出すまで曲を完全に忘れていた。ネット上にインフォが全然見当たらず、サンフランシスコ産ということ以外わからないが、シングル2枚ともに恐らく自主プレスだろう。兎に角In The Nightに尽きる。KILLEEERRRR!!!!!
[1978 A Needles and Pins "Sound" Product 7"]
Needles and PinsのヴォーカルDenny Wardのソロ名義だが、実質Needles and Pinsの2ndと言える。Phil Spector信仰者であり、後にBeatのギターになるLarry WhitemanがBeat加入前に在籍しており、この曲もPage Porrazzo(Needles and Pins, Low Numbers)と共作している。b/w"Show Me"はSteve Hufsteter(Quick, Dickies)の曲で、RhinoからのVA/LA Inにも収録されている。更にギターでBill Bizeau(Quick)とドラムでTim McGovern(Pop, Motels)が参加。余談だが、Page Porrazzo(aka Jamie LePage)は1991-94年の約4年間、Shonen Knifeのプロデューサーを務めており、"Top Of The World"や"Heatwave"の名カヴァーの影にはPageの功績があったといえる。”Spectro Pop Express"というサイトのJamie LePageのページで上記について記されているが、Needles and PinsとShonen Knifeがつながるとは思わなかったのでビックリした。その他にもGreg ShawやKim FowleyといったLA Powerpopの重鎮も取り上げられいるので興味深い。http://www.spectropop.com/ というわけで本作は両面ともにぶっきらぼうなDennyのヴォーカルがクセになるSpectropopの傑作盤!
09 EARWIGS / She's So Naive[1982 Rock-A-Mod 7"]
どこまでも蒼くひたすらに疾走するピュアパワーポップ"She's So Naive"のイノセントな煌めきは他に類をみない。ルックスが硬派で不良な輩が、こんな曲をやってると思うと聴けば聴く程に愛おしい。b/w"Here Comes The Earwigs"はPunk/Powerpop/R&Rの良いとこだけとって凝縮したような、これぞ"Fab Gear"な超名曲だ!killer 2 siderとはまさにこれといえる究極の一枚。このシングルはジャケットデザインが"Logo"と"A Band Past Over"の2種類存在し、今回取り上げたのが後者。どちらも1stプレスらしいが、後者はメンバー写真とインフォを印刷したチープな紙を前者に貼付けたもの。しかも所有しているものは、その紙の貼付ける向きがあべこべで間違っている。オレンジカウンティで結成、シングルの録音はPhantom Studioで1981年の模様。マスタリングとプレスはPhil Spectorの"Wall Of Sound"でお馴染みのGold Star Recoding Studios、1982年にリリースされた。当時のセットリストによればLiesやShout等のカバーもやっていた模様。Hippy Hippy Shakeをカバーしているバンドは間違いない説がまたひとつ実証された。Plimsoulsといっしょに取り上げられた紙面や、Josie CottonやTazorsと共演の記録も残っている。Sing SingやTKOより再発の予定があったが未だ再発されていない。中心メンバーのMichael Ubaldiniは現在もLAでソロ活動を精力的に行っている。It's A Rave!